「保育士という生き方」(井上さく子)

保育士の道を歩むための道しるべとなる一冊

「保育士という生き方」
(井上さく子)イースト新書Q

あるサイトで
「中学生のなりたい職業トップ10」を
見てみたら、女子の第6位に
「保育士」がランキングされていました。
最近は
「パティシエ」などのカタカナ職業や
「YouTuber」など職業といえないものに
子どもたちが
あこがれる傾向があるのですが、
保育士はまだまだ人気が高いことに
安心しました。

保育士という職業について
解説されている本はいくつかあります。
本書はそうした職業解説本を超えて
「生き方」まで踏み込んだ本なのです。

著者は保育士として38年間勤務し、
最後は園長まで勤め上げた、
まさに「保育士という生き方」を
貫いています。
したがって、単に保育士だけに限らず、
職業すべてに関わる内容が多く、
私にとっても大変参考になりました。

「『子どもは国の宝だ』と言うなら、
 幼児教育の段階から、
 子どもたち誰もが平等に学ぶ権利を
 得られるようにするべきです。」

現在は「幼稚園」と「保育所」に
分けられていますが、
それらが一体化した「認定こども園」に
保育を一本化させることの推進を、
著者は訴えています。
特定の家庭の子どもたちしか
「幼児教育」を受けられないのは
不平等であると、私も思います。

「私がいつでも伝えていたことは、
 『今、子どもをどこに置いて
 考えていますか?話していますか?』
 ということです。保育はいつでも
 子どもと向き合っていく仕事です。」

教育はすべてそうだと思います。
子どもを中心に据えて
考えているかどうかは
忘れていけないことだと思います。
当たり前のことですが。

「主体的、能動的な子どもに
 育ってほしいという願いがあるのに、
 『あれをやりなさい!』
 『これはやっちゃダメよ!』
 そんな『指示・命令・禁止』の
 言葉の渦の中に
 子どもを置いてしまうと、
 主体性なんて
 育まれるわけがありません。」

これは確かにその通りです。
私などもついつい
そんな言葉を発しがちなのですが。

きれい事だけではなく、
保育の仕事と
自分の子どもの子育てとの
板挟みになった経緯も
丁寧に書かれています。
実はここに本書の
「生き方について考える」部分が
凝縮されているのですが、
ぜひ読んで確かめて欲しいと思います。

近年は「待機児童問題」が
話題になるなど、
「保育」が社会にとって
必要不可欠なインフラであることが
ようやく理解されてきました。
少子化とはいえ、
今後ますます需要が増える
職業であることは間違いありません。
子どもたちが希望と自信を持って
保育士の道を歩む、
そのための道しるべとなる一冊です。

(2019.4.18)

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